はっきりとした拒絶に、胸が張り裂けそうなくらい苦しくなった。

謝りたいのに、うまく言葉が出てこない。

優しくしたいのに、結局傷つけてしまう。

…これじゃあ二年前となにも変わらない。

わざわざ非常階段を使って降りていってしまったエリカを先回りすべく、俺はすぐエレベーターへ乗り込んでいく。

(俺が伝えたいのは、…あんなことじゃない)

このまま帰る気には当然なれなくて、俺は煙草をふかしながらエリカが職員用玄関から出てくるのを、ひたすら待っていた。




(そういえば…大事な用事があるとか言ってたな)

あれから十五分近く経ってるというのに、エリカは一向に姿を見せない。

入口って…よくわからないけど、たしかここだけだよな。

そもそもあいつは歩きだし、地下の駐車場に行くわけがない。

まさか…用事って男か?

その考えに至った瞬間、俺の顔から血の気がすーっと引いていくのを感じる。

相沢にエリカは男性不信だということを告げられていたから、どこか安心し切っていた。

もし…エリカの悩みを癒せるほどの存在と、すでに出会っていたらどうする?

よからぬ妄想に取りつかれている俺の耳に、どこからか小さな子供の声が聞こえてくる。

「…え?」

いっそのこと、彼氏がいた方がまだ救いはあったかもしれない。

瓜二つの顔をした子供と手を繋ぐエリカの姿を目の当たりにした瞬間、俺の世界は完全に停止していた。