急に俺が黙り込んでしまったせいで、相沢との間に気まずい雰囲気が流れる。
味方になってくれれば心強いが、敵になれば厄介な相手だ。
ここは慎重に、相手の出方を伺ったほうが身の為だろう。
「…店長として頑張っているあいつに、余計な心労をかけたくない。プライベートな空間まで、上司に気をつかって過ごしてほしくないからだ」
「エリカに嫌われてる自覚はあるわけですね」
「……!」
あまりにもはっきりと言い放った相沢の言葉に、俺は目を丸くする。
相沢に俺たちの関係を知られていることが、この瞬間に確定した。
「あなたですよね?エリカを男性不信にした元彼のマネージャーって。一体どういうつもりでここに来たんですか?」
男性不信という言葉に、思わずギクリと反応してしまう。
確かにエリカがそうなっても仕方のないことを、昔の俺は確かにやってきた。
「…悪いが、その質問の答えを結城以外に話すつもりはない」
「あら、そうですか」
口では残念ぶっているが、その表情は余裕に満ちている。
「言っておきますけど、エリカのことこれ以上傷つけたら…許しませんからね。では」
どうやら相沢にも、俺はいい印象を持たれていないらしい。
(…エリカの周りは厄介な奴だらけだな…)
言いたいことだけ言ってさっさと出ていった彼女を、俺は複雑な思いで見送っていた。