「それはお前の決めることじゃないだろ」
「うるさいな。必要ないって言ってるじゃん」
再会したばかりにもかかわらず、エリカは俺が店にヘルプで入ることを全力で拒否してくる。
相変わらずのタメ口を引き出せたことが懐かしくて、俺の口調もだんだん強くなっていた。
今日早番だと思っていたエリカは、なぜか十一時頃出社している。
聞けばバイトが急に休みになって、時間をずらし遅番を一人で兼任しようとしていたらしい。
それを指摘すると、急に大人しくなってしまった。
「何でも自分ひとりで片付けようと思うな」
ただお前が心配だから手伝いたいと、その一言が簡単に言えれば、俺はこんなに苦労していない。
何か言いたげなエリカに目をくれることもなく、俺は事務所の中に足を進めていた。
なんでも抱え込んでしまうエリカのことだ。
何かあれば自分を犠牲にしてしまうところは、昔とちっとも変わっていない。
だから助けになれればと思って、ヘルプの話を通してもらったんだ。
従業員の名簿やシフトに目を通しながら、俺は深い溜息をつく。
いくら人件費を削りたいからといっても、この少ない人数では店を回すのも一苦労だったに違いない。
ついでに今週の予算や入荷の予定にざっと目を目を通していると、ドアの向こうから軽快なノックの音が聞こえてきた。