直接“嫌いだ”と言われるよりも、ああいう態度をとられた方がずっと堪える。
二年という時間が、俺とエリカの溝を深めているのは明白だった。
「…くそ…」
悔しげに呟きながら、やや乱暴にボタンを押す。
もう一基のエレベーターを待つ少しの時間すら、焦れったくて仕方ない。
(もう、あいつが勝手にいなくなるのは懲り懲りだ…)
あの時何も出来なかった後悔の念が、じわじわと蘇ってくる。
ようやく乗り込んだエレベーターの中で、俺は歯を食いしばりながら、その痛みに耐えていた。
レディスファッションのフロアは4階にあり、有名なアパレルブランドのショップがいくつも軒を連ねている。
店内の案内図を確認しながら、俺は足早にエリカの店を目指していく。
中々広いフロアを歩き回っているうちに、俺の額にはうっすらと汗が滲んでいた。
ようやく店にたどり着いた時には、少し息も上がっていたけれど、今は気にする余裕もない。
店の前で男と親しげに話しているエリカの姿に、俺の目は釘付けだった。
「ねぇ、じゃあ今夜どう?連絡先教えて」
見た目も中身も軽そうな男がエリカに迫っているのがわかると、俺の歩幅が急激に広くなる。
俯いてしまったエリカの様子はよくわからなかったが、なんとなく困っているような雰囲気だったからだ。