車を運転しながら、店とマンションの道順を確認する。
その距離は徒歩でも約五分かからないくらいで。
信号待ちや駐車場に停めたりする手間を含めれば、出勤にかかる時間はどちらでも大して変わらないくらいだった。
でも細い道は思ったより街灯が少なく、遅番で帰りが遅くなった時は、断然車のほうが安全だろう。
問題は、エリカが俺に送らせてくれるかどうかだ。
二年前俺の車に乗ることを激しく拒否されたことを思い出し、俺は苦笑いを浮かべながら小さくため息をついていた。
守衛にIDカードを見せて職員専用の通路に向かった俺は、突然の再会に思わず目を瞬かせた。
いきなり過ぎて、固まったまま身動きが取れない。
突然通路途中のドアから現れたエリカの姿に、目が奪われていた。
「……!」
緩く巻かれた茶色の髪が、肩ぐらいの長さだったのに比べて胸元まで伸びている。
昔とは化粧の仕方も変わったみたいだ。
ぐんと大人っぽくなった表情に、俺はエリカが遠くなってしまったような不安を覚えていた。
背筋を伸ばしながら颯爽と歩いていくその後ろ姿に、見蕩れてしまったのは言うまでもなく。
「……エリカ!」
焦った俺は、闇雲にその名前だけを口にしてしまった。