翌朝の目覚めは、やけにすっきりとしたものだった。
昨日色々と食料や雑貨品を買い込んだ俺が帰宅したのは、夜の二十三時過ぎで。
すでにエリカの部屋の明かりは消え失せ、物音ひとつ聞こえてこなかった。
(友達が泊まってるにしては、寝るのが早いな…)
少し疑問を感じたが、次の日が早番だから早めに寝たのだろう。
移動の疲れも相まって、昨日は俺もあっという間に就寝してしまった。
歯を磨きながら、いつもより丁寧にひげを剃り、ワックスで髪の毛を整える。
柄にもなく緊張しているのが、鏡に映った自分の硬い表情から伝わってきた。
本当は十二月に入るまで有給扱いになっているから、俺が働く必要はない。
でも有給が明けるまでエリカに会わないという判断は、最初から切り捨てていた。
ここで一緒に過ごせる時間は限られている。
一分だって、一秒だって譲れないくらいだ。
クローゼットからスーツを選び、手早く身支度を整える。
就業規則を無視してでも働こうと思うほど、俺の頭の中はエリカでいっぱいだった。
俺がこの街にやってきた理由は、ほかならぬエリカのためなのだから。