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東京から新幹線で、およそ二時間の旅だった。

ようやく仙台の地に足を踏み入れた俺は、スーツケースを転がしながら見慣れない街を静かに見つめる。

駅からほど近い街の中心部にそびえる、大きなファッションビル。

ここでエリカが働いているのかと思うと、気持ちが高ぶらずにはいられなかった。

(…やっと会えるのか…)

今すぐにでも会いに行きたい気持ちを抑えながら、俺は自分が住む予定のマンションを目指す。

決して意図してやったことじゃないと言ったら、あいつは信用してくれるだろうか。

会社で借り入れているそのマンションだから仕方がないこととはいえ、なんと俺の部屋はエリカの部屋の隣だった。

同じマンションに住むことになるのはわかっていたけれど、まさかこういう展開になるとは…。

自分の運の強さに感謝しつつも、はっきり言って心の中は複雑だった。

きっとエリカは、俺のことを恨んでる。

あんな別れ方になったんだから、それは当然のことだし、今さら後悔しても仕方ない。

昔自分を傷つけた男が隣の部屋に越してくるなんて、エリカにとったら迷惑以外の何ものでもないだろう。