平泉のオヤジは散々反対したけど、俺が頑なに意思を曲げないことを悟ると、最後には案外呆気なく折れてくれた。

でもそんな喜びも束の間。

決まってからも引継ぎに追われてすぐには仙台に向かえず、それから半年の間は東京と東北の各地区を出張で周り続けていた。

もちろんエリカのいる仙台以外の場所ばかり。

あれからもうすぐ二年が経つ。

エリカがいつの間にか店長に昇進していることを知ったのは、俺が異動を願い出た後だった。

今まで敢えて彼女の情報を探ることはしなかったせいか、ここまで我慢してやって来たものがとうとう噴出した。

痺れを切らした俺は、平泉のオヤジを介して上に掛け合ってもらい、ようやくヘルプで店に入ることを許されたのだ。

販促部のアドレスを使って送った通達のメールに、エリカは警戒心剥きだしで断りの連絡を返してくる。

もしかしたら俺が東北地区の担当になったことを、すでに知られているのかもしれない。

そばにいられる期間は、今のところたった一ヶ月の予定だ。

どうにかして、普通に会話ができるくらいには距離を縮めたい。

エリカの返信を無視して、俺は早々に新幹線のチケットを手配する。

結局有給も使って、俺は十二月に入る一週間前には前倒しで仙台に向かおうと決めていた。