それは一週間経っても同じことで、一ヶ月経っても俺は相変わらずエリカのことばかり考えていた。
さすがに自分はおかしいんじゃないかとすら思う。
全く会えなくなってしまったのに、日を追うごとに気持ちは薄れるどころか、どんどん濃度が増していく。
たまに渡せなかった指輪を見つめていると、どうしようもないくらい愛しい気持ちが溢れ出してきて止まらなくなる。
…はじめからわかっていた。
忘れようとすればする程、焦がれる気持ちが増していくこと。
諦めること自体無理だったのかもしれない。
エリカはもう、俺の一部として心に住み着いている。
自分の執着心がここまで酷いとは…。
思わず苦笑しながら、額を手で押さえる。
(…追いかけるのは、まだ早いな)
「橘、結城のことだが…知っていたのか?」
「…はい」
気の毒そうに目を細めた平泉のオヤジが、一枚の書類を取り出して俺の前に置く。
エリカが仙台の店に移るという知らせは、年明け後早い段階で知らせが来ていた。
シラを切り続けるのも限界と判断したのだろう。
「俺はもう…なんて言ったらいいのか…」
沈痛な面持ちを浮かべる平泉のオヤジは、呻きながら顔を手のひらで覆っている。
「大丈夫です。遠距離ぐらい」