いつもは何も考えずに淡々と終わらせきてた。
担当した販売員がそれぞれの店舗に配属された後も、ここまで気にかけたことはなかったのに。
…なんなんだ、この虚しさは。
自分でも気づかないうちに、俺は結城に深入りし過ぎてしてしまった。
それに意外と根性のある奴だったから、ちょっと他より目をかけるようになってしまって、情のようなものが移ってしまった。
あいつは話も考えも面白いし、一緒にいて退屈することがない。
結城のいない日常なんて、つまらないものにしか思えなかった。
「おいギリギリだぞ。余裕持って出せって俺何度も言ったよな」
「実は…書くの昨日まで忘れてて…」
研修の報告シートを一番最後に提出してきた結城を、俺は軽く舌打ちしながら睨みつける。
今日でこうして会うのも最後。
ただでさえ朝から焦燥を感じて苛々していたのに、結城は一日中上機嫌でテンションも高い。
それがさらに俺の面白くない気持ちを加速させた。
大方、俺と顔を合わせることがないから、もう怒鳴られずに済んで嬉しいんだろう。
「…そんなに俺が嫌いか」
「えっ?き、嫌いなわけないじゃないですかー。尊敬してますよー」
「……」
棒読みすぎて、嘘を隠す気すらないと思えてくる。
早く帰りたいと顔に書いてある結城を、俺はただ黙って見つめる。
そうしているうちに漠然と思った。
…逃したくない。
俺はこいつとの繋がりを断ちたくない。