販売員としてはいいものを持ってるだけに、結城は欠点が際立って目立ってしまう。

何でも自分一人で解決しようとして、俺には相談にも来ない。

だからあいつが客注対応でミスって他店の店舗スタッフのせいにした時、俺は思わずいつもより強く言い過ぎてしまった。

「やる気ないなら辞めちまえ!」

俺が本気で飛ばした怒号に、結城は一瞬だけ怯えたような目をした。

もしかしたら泣かれるかもしれない。

じゃあ辞めますって、すぐにでも辞表を出してくるかもしれない。

でも結城は俺の予想していたものとは全然違った表情をしていた。

悔しさと強い意欲の孕んだ大きな瞳。

その目からいつか俺を見返して認めさせてやるっていう熱い意志が伝わって来て―――めちゃくちゃゾクゾクした。



翌日から結城はなにかがふっ切れたように、益々元気な笑顔で店に立っていた。

しかもいつもより人一倍動いて、仕事をどんどんこなしている。

そしていつもの小さなミスも健在だ。

「結城、メンバーズカードの有効期限の日付スタンプ、全部1年ズレて押してるぞ」

「……!」

「直すの手伝ってやるから。後でコーヒー奢れよ」

こいつの前では、作り笑いをする必要も皆無で、遠慮なく素の自分が出せる。

それが心地いいことだと気づいた時にはもう、OJTの研修は終わりを迎えようとしていた。