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オープンまでは体力面というよりも、精神面との戦い日々が続いた。

思ったとおり毎日残業続きで、深夜遅くに家へ帰っては翌朝も早めに家を出て仕事に向かう。

声も聞けない、姿を見に行くことさえ出来ない状況に、俺のフラストレーションはどんどん溜まっていく一方だった。

それでも朝と夜だけは必ず連絡し合っていたから、なんとか自分を保つことが出来たのかもしれない。

“疲れた”と送れば“お疲れ”と上から返してくるエリカに、随分救われた気がする。

決して途切れることのない何気ないやり取りの中に、俺はエリカの優しさのようなものを感じていた。




そうしてようやくオープンまでこぎつけたその日、エリカからもしかしたら店に行くかもしれないと連絡が入った。

ただ新しい店を見に来たいだけかもしれないが、俺の気持ちは相当沸き立ち当然気合も入る。

会えると思うだけで、こんなに世界が変わって見える。

久しぶりに俺に会ったエリカは、一体どんな顔をするだろうか。

ずっと気を張ってピリピリとした雰囲気を醸し出していた俺が一人でほくそ笑んでいるのを、店の連中が信じられないようなものを見るような目で見ていたのは、言うまでもない。