結局エリカからは、“了解”と可愛げのない返信が来ただけ。
ため息をつきながら車を駐車して自分のマンションに向かうと、集合ポストの所に人影が見えた。
そこはちょうど、俺のポストの前で。
白い封筒をバッグから取り出した女の手を、俺は思わず後ろから掴み上げていた。
「それ…どうするつもりだ?」
眉根を寄せながら、俺は冷たい口調で相手に話しかける。
振り返った女は、顔を赤らめながらパッチリとした二重の瞳で俺を見上げていた。
(ああ…やっぱりか)
「…奈良橋」
「お、覚えててくれたの…?」
「覚えてるもなにも…」
こいつのことはインパクトが強すぎて忘れることなんて出来ない。
振った女に、あそこまでしつこくされた経験はなかったから。
公衆の面前でセフレでもいいからと迫られたのは、後にも先にもコイツだけだった。
「あ、あのね…。翔太くんのカッコイイ写真、いっぱい撮れたから…あげようと思って」
悪気もなく笑顔を見せる奈良橋に、俺は一瞬引いた。
大学ではミスだか何だかに選ばれてたみたいだけど、はっきり言って俺の好みではなかったから。
だから計算しつくされた美貌には違和感しか感じない。
「…もう、こういうことはやめてほしい」