「吐き出せるもんは、全部ここで吐き出しちまえ」

「……」

正直、このオヤジに弱みを見せるのは癪に障る。

でももう…どうにでもなれと思った。

アルコールが回っていたせいなのか、気が付けば俺は抱えていた心情を無意識に吐露していた。

「半年前くらい前から、…女にストーカーされてます」

「お前また…なんつーか…モテない男にとったら、随分贅沢な悩みだな。なんでそんなの、半年も放っておいたんだよ」

「昔から、そういう嫌がらせに慣れてたから…。俺の知らないところで勝手に彼女面されたり、根も葉もない変な噂も流されてました。いちいち否定するのも面倒で、ほとんど放置してきたんです。…おかげで今まで付き合った女は、みんな愛想つかして向こうから離れていきましたけど」

今となっては、みんなどうでもいい女だったから、平気だったんだと思う。

本当のことを言っても、結局誰も信じてくれないだろうって、最初から諦めてたぐらいだ。

「俺が過剰に反応しなければ、付きまとってくる相手も大抵諦めてくれてたんですけどね」

「…相手は知ってる女なのか?」

「ずっと弁護士に相談してたんですけど、最近わかりました。同じ大学だった…昔告白されて、振った女です」

「じゃあ知り合いかよ。警察には…相談しづらいのか?」

「俺も全然知らない奴だったらすぐ警察に突き出してやろうと思ったんですけど、…実際気が引けますよね」

今のところ被害は隠し取り写真が投函されるのと、一日数通のメールだけ。

弁護士には被害届けを出すように勧められたが…、俺はまだ、そこまで踏み切れずにいた。