「よくお似合いですよ」

「えー、本当?イケメンのお兄さんがそう言うなら、こっちのにしようかな」

「…ありがとうございます」

昔から無駄に整ったこの顔が俺のコンプレックスだ。

腹黒い中身を知られる度に落胆され、恋愛も長く続いた試しがない。

だから見た目だけで勝手な理想を押し付けられるのに嫌気がさし、表面上の笑顔を繕うのに長けるようになった。

今はこうしてそれが仕事に活かせているんだから、何も問題はない。

「またお越しくださいませ」

お客様に向かってお辞儀をした俺にならって、レジで対応した結城も頭を下げる。

やっと今週入荷したフォーマルワンピースの新作が売れて機嫌がよくなった俺に、結城は隣から怪訝な表情を向けていた。

「なんか文句あんのか」

「絶対にお客様が最初に選んだワンピースの方が似合ってた」

「…最終的にどちらを購入するか決めたのはお客様だ。値下げのかかった商品は勝手に売れるが、新作は売り込まないとなかなか動かない。どちらを勧めるかなんて、売り上げのことを考えれば一目瞭然だろ」

「どう考えても似合ってないのに、よく平気で似合うなんて言えますね。はぁ…本当に嫌な感じ、橘マネージャーって」

「いくら言っても敬語を使えないお前のほうが、よっぽど感じ悪いからな」