なんでこいつはこんな無抵抗で、俺にいいようにされているんだろう。
犯すみたいに無理やり抱いてるのに、嫌だという素振りすらみせず黙って俺を受け入れている。
エリカは固く目を閉じて唇を噛み、まだ微かに感じる疼痛を必死で耐えていた。
痛がったら、俺に悪いとでも思ってるのか?
こんな姿を見れば加減して手を休めるどころか、新たな劣情が生まれてきて、際限なく求めてしまうというのに。
「辛いか?」
「…はぁ、…っ、うん…」
始めた時から、エリカはあれ以来誰のことも受け入れてないってわかったのに、俺は止めてやることが出来なかった。
心配の言葉は口先だけで、ベッドに沈んだ細腰を両手で捕まえては、狂ったように何度も揺さぶり続ける。
唇を要求すれば、辿たどしく舌を絡めようとしてくるエリカを、俺は心底可愛いと思った。
ずっとずっと、この腕の中で飼い慣らされていればそれでいい。
二人の息遣いと肌が交わる音以外は何も聞こえない。
ただひたすら、エリカに溺れた夜だった。
「…馬鹿、だな」
どこまでも甘やかしてやりたいと思ってるのに、やってることは全く違う。
白み始めた空とエリカの疲れきった寝顔を、俺はぼんやりと見つめていた。
エリカが目覚める前に、さっさと姿を消す。
起きたらまた理性が保てなくなって、本能の赴くままにエリカを貪ってしまいそうだから。
それが…こいつにしてやれる、唯一の譲歩だった。
欲しいものを手に入れたはずなのに、心は全く満たされない。
伝えたい言葉は別にあって、もうそこまで出かかっているのに。
「…じゃあな」
眠っているエリカにそれだけ呟いて、俺は二人だけの秘密の部屋の扉に背を向けた。