それから朝と夜に他愛のないメッセージを送るのが、俺の毎日の日課になった。
エリカもそれに当たり障りのない返事をしてくる。
迷惑なメールも相変わらず届いていたけれど、エリカとやり取りをする度に不快な気持ちは薄れていった。
『明けましておめでとうございます』
「…おめでとう」
『今年もよろしくお願いします』
「あ、ああ」
『じゃ、じゃあそういうことで…』
初めての電話は新年の挨拶で、あいつが妙に畏(かしこ)まるから、俺まで柄にもなく緊張した。
期待してしまった俺は、どうしようもなくエリカに振り回されていると思う。
「そういうことって…どういうことだよ…」
「しょーちゃん!!雪だるま作ろっ!!」
「僕も僕も!!」
「ずりーな!俺も入れろよ!」
項垂れていた俺の周りに甥っ子たちがわらわらと集まってくる。
「おいお前ら、あんまり翔太を困らせるなよ。せっかく実家帰ってきてゆっくりしてんだから」
そんなことは微塵も思っていない兄貴が、生ぬるい視線を俺に向けていた。
「全く、彼女の一人くらい連れて来いよ。父さん達も心配してたぞ」
「……」
女を実家に連れてきたいと初めて思ったのも、エリカが初めてだと思う。
久しぶりに声を聞いたせいで、会いたくて仕方なくなって。
本当は三日まで実家に居るつもりだったのに、一日繰り上げて東京に帰ってきてしまった。