“消えるまで会わないからねー”
怒りを表す顔文字とともに送られてきたエリカからのメッセージに、俺は思わず吹き出しそうになった。
佐伯店長に指摘されて気づいた時、あいつは一体どんな面白い反応をしたんだろう。
今日一日背中が気になって仕方がなかっただろうエリカを想像した瞬間、張り詰めていた糸が切れる。
そしてなにより、俺の残した痕が消えれば会えるという安心感が胸に広がっていく。
正直、やっぱりなかったことにしたいって言われる可能性も、頭の中には入っていたから。
「…今日25だから、早くても会えるのは9日後かよ。長…」
販売員に、年末年始の休みなんてものは存在しない。
特に東京は元日から初売りが始まるから、大晦日から三が日にかけては、目が回るくらい忙しくなるだろう。
俺だって年末休みに入るまで、毎日残業で忙しくなるだろうから、今までのように気軽に会いに行けなくなる。
疲れたエリカを呼び出してまであいつの身体を貪るようなことはしたくない。
だからその要求は、甘んじて受け止めてやることにした。
“消えたらすぐ教えろよ”
画面の向こうで赤面してるエリカを思い浮かべて、俺はシーツの上にスマホを投げ出す。
…俺は何日、我慢できるだろうか。
たった一日で参ってしまいそうな乾きを感じ、俺は手のひらで顔を覆いながら苦笑していた。