その日はもう、何度達してしまったのか自分でも検討がつかない。
開けっ放しのカーテンから、背中に柔らかな太陽の日差しが降り注いでくる。
大きく息を吐いた俺の下には、ぐったりと弛緩しきったエリカの身体があって。
シーツに広がる栗色の艶やかな髪に、俺は複雑な気持ちで自分の指に絡ませていた。
あれから休ませることなく抱き続けてしまったせいで、彼女は疲れきり泥のように眠ってしまっている。
せめてもの償いに温かいタオルで身体を清めてやると、エリカの身体には目を見張ってしまう程俺の痕跡が残されていた。
「なにやってんだ俺…」
嫉妬と独占欲の激情に苛まれて、随分酷いことをしてしまったと今更ながら思う。
寒くないように肩口まで毛布で包んでやれば、エリカはまるで猫のように身体を丸め俺の胸に顔を擦り寄せてきた。
「……嘘だろ」
自分でも馬鹿じゃないかと思うくらい求めたのに、どうやら自分の身体はまだ満足していないらしい。
こりることなく頭をもたげ始めた欲望に、俺は苦笑するしかなかった。
…もういい加減にしろ。
そう自分に何度も言い聞かせて、ようやくベッドから降りる。
シャワーを浴びたあとスーツに着替えた俺は、エリカの出勤時間に合わせてアラームをセットしてやった。
起きた時俺がいないことに、エリカは少しくらい淋しさを感じてくれるだろうか。
これから主導権を握るのは俺でありたいと思うのに、俺はなんだか後ろ髪を引かれる思いでホテルの部屋をあとにしていた。