二年前のことや、この間のクリスマスのこと。

エリカは俺の胸に頭を預けながら、険しかった表情を次第に和らげていった。

「怪我も何もなくて……本当に良かった」

「……俺が女なんかに襲われる訳ないだろ。しかもあいつ俺に惚れてたわけじゃなくて、復讐したくて付きまとってたみたいだし」

「復讐どういうこと?大学の同級生だったんでしょ?」

このまま素直に認めるのも、何だか面白くない。

「……元カノ」

「……!!」

そう言った瞬間エリカが真っ青になったのを、俺はじっと無表情を装いながら見下ろしていた。

……こいつといると、本当に飽きない。

さっきまで笑顔だったのに、今はもう、泣き出してしまいそうなくらい顔を歪めている。

「……エリカ?」

名前を呼んでも反応はなく、まるで小動物のように縮こまりながら、険しい表情でフローリングの床を睨みつけていた。

「……ふ、すげぇいい顔してる」

奈良崎なんかに妬いてしまう程、俺のことが好きで好きでたまらない、……そんな表情。

「信じられない」

「……何が?」

「そんな話されて、平気な顔できるわけないじゃん……!」

拗ねてしまったエリカが、俺に背を向けながら膝を抱えている。

ヤバイな。……これ以上いじめると、後々取り返しのつかないことになりそうだ。

「嘘だよ」

「はぁ!?」

後ろからお腹に手を回して抱きしめれば、エリカが弾かれたようにすごい勢いで後ろを振り返ってくる。

「元カノじゃない。告白されたことはあるけど、全然好みじゃないから振った。…ストーカーになったのは、振ったことに対する逆恨みだろ」

騙されたことに気づいたエリカは、顔を真っ赤にしながら俺の顔を恨めしそうに見上げていた。

「……どうだ。お前に嘘をつかれた俺の気持ち、少しはわかっただろ」