エリカが聞きたいことはよくわかっている。

二年前から俺と親密そうにしていた女に婚約者だなんて言われたら、混乱して、あんな別れを選んでしまったのも無理はない。

「お前を巻き込んでしまったことは、……本当に悪いと思ってる。エリカと奈良橋が直接会ったって聞いて、俺は……死ぬほど後悔した」

「奈良橋って、翔太をストーカーしてた人でしょう?」

奈良橋との関係を追求されるだろうと思っていた俺は、エリカの思いもよらない発言に目を瞠ってしまう。

「お前、それをどこで……」

「……さっき平泉マネージャーに偶然会って、なんとなく事情聞いたから……。その、別れてからの……二年間のことも」

勝手にバラしてくれた平泉のオヤジに、俺は心の中だけで舌打ちする。

偶然エリカと出くわして、有頂天にでもなったのだろう。

ペラペラと得意げに語っているあのオヤジの姿は、容易に想像することができた。

「……あのオヤジ……、余計なことを……」

「余計なことじゃない。なんで頼ってくれなかったの?翔太がちゃんと言ってくれてたら……私は……」

俺に強い瞳を向けるエリカの表情は、真剣そのもので。

……やっぱり俺が間違っていたんだと、嫌でも痛感してしまった。

「……言ってくれなかったら、何もわからない。翔太はずっと……私の身体だけが目当てで……付き合ってると思ったんだから」

「…エリカ…」

「クリスマスの日だって、あの人に何も反論できなくて悔しかった。翔太は私のだって、胸張って言ってやりたかったのに…!指輪だって…同じの見せられて…それで私、翔太にあんなひどいことを…」

あの最悪な日を思い出してしまったのか、エリカの目尻がだんだん赤みを帯びていく。

やっぱり気持ちは、……言葉にしないと伝わらない。

エリカの頭を優しく撫でながら、俺は包み隠すことなく、奈良橋との関係を打ち明けていた。