俯いているエリカの瞳から、涙の雫がコンクリートに向かって滴り落ちていく。

不思議なことに、エリカを責めようなんて気には全くなれない。

それどころか、目の前にいる意地っ張りなエリカのことを、思いきり抱きしめたくなった。

「嬉しかった……寧々を、本当に私の子供だって思って愛してくれたこと」

子供のように泣きじゃくるエリカから、真っ直ぐな気持ちが伝わって来る。

「翔太が私のために選んでくれた指輪も、いらないなんて言って、本当にごめん……っ」

謝り続けるエリカを慰めるように、俺は小さく頷いていた。

「……私も、ずっとずっと、翔太が好きだった。二年前のあの日から、忘れた日なんて一度もなかった」

こみ上げてくる愛しさに、俺までもらい泣きしそうになる。

ぐっと歯を食いしばりながら目を瞑った俺は、溢れそうになる気持ちをなんとか制御していた。

(エリカには……そんなカッコ悪いところ、見せたくない)

不安そうに眉根を寄せているエリカに一歩近づいて、俺はポケットからジュエリーケースを取り出す。

本当に永遠の輝きを思わせる美しい指輪に、エリカは口を開けたまま硬直していた。

「翔太……?」

「なんだよ、嘘つき女」

「そ、それ……って」