「だ…だ、めっ」
バスローブの襟ぐりを掴んだ俺の手をやんわりと押し返しながら、結城はベッドの中でこちらに背を向ける。
「なんだ。酒が抜けて怖気付いたのか?」
後ろから腰に手を回して抱き寄せると、結城は耳を赤く染めながら首を横に振っていた。
「明日ってか、…今日も仕事だし」
「お前遅番だろ。昼前までここで休んでいけばいい」
「で、でも…橘マネージャーは、普通に出勤でしょ…」
まさか俺を気遣うような発言が結城の口から聞けるとは思わなくて、一瞬だけ放心してしまった。
「…俺より、自分の心配しとけ」
言い捨てるように呟いた俺は、無防備な胸元へと後ろから手を侵入させる。
すると上質な絹のように柔らかい感触が、いとも簡単に俺の手に馴染んできた。
「た、橘マネ、ジャ…」
前のような関係には絶対戻れない。
…俺はもう昨日の時点で、結城の肌がどれだけ自分にとって心地いいものかを知ってしまった。
「今はお前の上司じゃない。その呼び方やめろ」
目の前にさらけ出されたまっさらなうなじに、噛み付くように激しく口づける。
「ん…じゃ、なんて、呼べば…た、橘っ?でもそれだと、なんか偉そうじゃ…」
「下の名前」
「……」
恐る恐る俺の顔を見上げてきた結城の苦笑いのような表情に、俺はなんとなくありえないことを思い浮かべてしまった。
「…まさか、」