「なに……して……」

ゆっくりと唇を離した俺のことを、エリカが唇を震わせながら見上げている。

林檎のように赤く染まった頬を、俺はゆっくりと包み込んでいた。

「俺が寧々の父親になりたいって言ったの、覚えてるか」

「……え……?」

「今もその気持ちは変わってない。……むしろ、あの時よりも強くなった。それがなんでかわかるか?」

意味がわからないといった様子のエリカに、俺は更に言葉を続けていく。

偽りのない俺の気持ちを、ちゃんとエリカに解ってほしかったから。

「お前が母親だからだ。たとえ父親が誰でも、寧々はエリカが血を分けたった一人の娘だろ。お前の大事なものは、俺にとっても大事なんだ。俺はエリカのことも寧々のことも、あいつなんかに渡したくない」

「……しょう、た……」

「……無理なんだ。お前じゃなきゃ」

頬に触れていた手を背中に回して、そのままエリカを腕の中に引き寄せる。

まるで壊れ物を扱うように、華奢な背中を優しく包んでいた。

「俺と一緒に生きる道を選んでくれるなら、責任持って、寧々のことも俺が養ってく」

そう言った瞬間、エリカの肩がビクッと僅かに跳ねる。

そんなの、俺にとっては当たり前のことだった。

大事なエリカの娘を、手放すわけがない。

「好きだエリカ。俺はお前のことを、誰よりも愛してる」