「…見つけた」

“翔太”と呼ばれて、半ば衝動的に俺は後ろからエリカの身体を抱きしめる。

久しぶりに感じたエリカの温もりに、愛しさが一気にこみ上げていた。

そのままそっと肩に腕を回して、俺の方に身体の正面を向かせる。

エリカはなぜか俯いたまま黙り込んでしまい、全く顔をあげようとはしなかった。

「来なくていいからそこを動くなって言ったのに、なんで勝手に動き回るんだお前は!」

「……ご、ごめ…」

こんなことが言いたいわけじゃないのに、俺を避けるような態度ばかり取るエリカに、つい声を荒らげてしまう。

「行き違いになるとこだったんだ。俺もたった今、仙台から戻ってきたとこだから」

エリカは肩を自分で抱きこみながら、小刻みに震えている。

さっき俺のことを名前で呼んでいたのは、何かの間違いだったのだろうか。

こちらを見ようとすらしないエリカに、心が焼ききれてしまいそうな焦燥を覚える。

「おい、聞いてんのか?こっち向けよ」

「今…無、理っ…」

くぐもった声が聞こえてきて、俺ははっとした。

その白い頬にはいくつもの筋が出来ている。

――泣いているエリカの顔を見た瞬間、俺の胸は痛いほどに締めつけられていた。