「……はぁ……なにそれ!?そんなことあるわけないでしょ!?」
今度は相沢が面食う番だった。
「だって……寧々ちゃんは……」
そこまで言いかけた相沢が、慌てて口を噤んでいる。
「なんだよ。相沢、お前何か知ってんのか?なんでエリカは、お前にそんな嘘をついたんだ?」
「し、知らない…そんなの、橘マネージャーが直接本人に聞きなさいよ」
「エリカは?今日早番だったのか?」
「遅番だったけど、私と代わったの。……今日東京に行くからって……」
「東京!?」
(まさか、あいつの元に行ったのか……?)
「新幹線で行くって言ったし、もう、多分あっちに着いてるよ。でも明日また戻ってくるから。…二日から初売りだし…おそらく夜には」
「一日だけって……なんで、そんな……」
どうしようもなく、嫌な予感がした。
エリカはもしかしたら、あの幼馴染の男に遊ばれているのかもしれない。
これからは俺がエリカを守ると言い放ったあの男のセリフが、ひどく安っぽいものに思えた。
「…くそ…あんな、あんな奴に……!」
エリカを渡したくない。俺のほうがあいつを幸せにしてやれると、身軽になった今なら胸を張って言える。
「橘マネージャー?」
「……決めた」
「な、何を…?」
「俺、エリカを迎えに行く。あいつから全力で奪い返してやる」