やがて目に入ってきた相沢の姿に、心臓が大きく跳ねる。

目を凝らしてエリカの姿を探したが、相澤の後ろから出てきたのは白鷺だけで他には誰の姿もなかった。

「…え!?橘マネージャー!?」

俺の車に気づいた相沢が、目を吊り上げながらこちらに近づいてくる。

「ちょっと!あんた今更どういうつもり!?」

フロントガラスを叩きかねないその勢いに、俺は慌てて車から降りていた。

今にも殴りかかってきそうな相沢を、白鷺が必死で押さえ込んでいる。

「美月さん、落ち着いてくださいよぉ」

「落ち着いていられるわけないでしょ!エリカがどれだけ傷ついたと思ってるの!?子供の話聞いたくらいで、逃げ出すなんて…」

「…逃げ出した…?」

「寧々ちゃんの話!あんたエリカに聞いたんでしょ?それで振るなんて…最低」

「悪い相沢。話が読めない」

「とぼけるんじゃないわよ。エリカ、嘘ついてたこと白状したら、橘マネージャーに振られたって……ずっと……ここのとこ毎日、元気なかったんだから!」

相澤の話に、俺は衝撃を受ける。

俺がエリカを振るなんて……何かの間違いだ。そんなことするはずがない。

「落ち着け相沢。振られたのは俺のほうだ。…寧々は俺の子供じゃないって。東京いた時に、幼馴染の男と不倫して出来た子供だって…エリカはそう言ってたんだ」