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明け方近くになって空が白み始めた頃、隣でぐっすりと眠っていた結城がようやく目を覚ました。

俺が起きていることに全然気づいていない結城は、身体に絡みついた俺の足や腕をどかすことが出来なくて、一人で慌てふためいている。

朝から赤くなったり青くなったり、忙しい奴だ。

「ぎゃっ…は、は、裸!?」

「…煩い」

「たっ、橘マネージャー!お、お願いだから服着てっ!」

「昨日散々見ただろ」

「見てないから!」

付き合うことになったはずなのに、結城の反応はいつもと変わらなくてイマイチだ。

「…ちゃんと覚えてんのか、昨日のこと」

「……っ」

至近距離から見つめた俺を見て、結城が引きつったような笑顔を浮かべている。

「…お前」

「さ、最後の方だけ、記憶が…ないんだけど…」

胸元がはだけたバスローブを手繰り寄せて、結城は更に顔を赤くしながら身を縮めてしまった。

どうやらここまで至った経緯は、なんとなく覚えているらしい。

「…ああお前、勝手に一人でイってそのまま気失ったもんな?」

「いっ…!?」

キスが初めてっていうくらいだから、もちろんそれ以上のことも結城にとっては未知の領域だろう。

「心配すんな。お前が意識失ってる間は何もしてない。…続きはこれからだ」

いきなり距離を詰めた俺を見た結城は、顔を林檎のように赤くしながら石みたいに身を固くしている。

ゆっくり進めていこうなんて悠長な考えを、今の俺が持ち合わせてるわけがなかった。