「……いいかげん、東京帰るか」
もう社員は年末年始の休暇に入っているため、事実上俺のヘルプ期間はすでに終了している事になる。
最終出勤日に店のみんなに挨拶はしたが、その日エリカは公休日だったため、あいつとだけ顔を合わせることが出来なかった。
こうしてぐだぐだと仙台に留まった理由は、そこにある。
マネージャーとして、店長に挨拶もなく帰るわけにはいかない。
まるで言い訳するように自分に言い聞かせて、アクションを起こせないまま数日が経過した。
……気が付けば、今日はもう年の瀬の大晦日だ。
自分の優柔不断さ加減には、本当に嫌気がさしてしまう。
どうせ、もう会えなくなるんだから。
ようやく決心して、俺は久しぶりにスーツに袖を通していた。
仕事として仕方なく会うのなら、エリカもそんなに嫌な思いはしないだろう。
ファッションビルは、俺の滞在しているホテルから、ほんの五分程度の距離にある。
颯爽と車を走らせながら、俺は時計を確認し、綿密な予定を頭の中で練り始めた。
挨拶だけして、今日の夜には東京に帰ってしまおう。
先に新幹線の予約を済ませようと思った俺は、駅の駐車場に車を止める。
問題は車をどうするかだが、さすがに東京まで運転して持って行く気にはなれないため、金はかかっても代行業者に頼もうと思っていた。
「……あと、必要な手続きは……」
車を降りようとした俺のポケットの中で、携帯が鳴り始める。
登録していない番号に顔をしかめながら、手早くネットで番号を検索していくと。
「…あ…!」
着信相手に心当たりのあった俺は、急いで画面を通話に切り替えていた。