「翔太くん、何で大学の時私を振ったの?私ミスコンでグランプリ獲ったこともあるの知ってるよね?あの時は傷ついたなぁ。…もっと早く、翔太くんの隣に並びたかったのに…」

「生憎俺は、女を見る目がないからな」

「だよねぇ…。良かったぁ、あんな小娘を選ばなくて」

「小娘?」

「ほらいるじゃない。いつも翔太くんの周りをうろちょろしてる、スタッフの女!遊びだったなら許してあげる。…ふふ。もっと早く身の程知らずだって、教えてやれば良かったな」

酒が入って饒舌になった奈良橋が、今度は自分でワインをグラスに傾けながら、自慢げに語り始める。

…やっぱり、こいつはエリカのことを知っていたのか。

「そうだな。…始めから、お前にしておけば良かった」

「感謝してね?二年前も今も、私が翔太くんのこと、あの女から助けてあげたんだから」

「それは…一体どうやって?」

「ふふ…じわじわとねー、私と翔太くんが仲良くやってるとこ、見せつけてやったの。それから二年間、翔太くんが女遊びしなくなったから、私も大人しくしてたんだけどねぇ。だから今回はー、遊ばれてるんだって教えてあげるために、色々演技しちゃった」

「…演技?」

「そう。翔太くんの婚約者のふりー。いいよね?だって私、いつかはそうなる予定だし」