「こ、こんばんは…」
「ああ。…入れよ」
まるでどこかのパーティーにでも赴くような、豪奢なワンピースを身に纏った奈良橋が、おずおずと俺の後に次いで部屋の中に入ってくる。
空いたグラスにワインを注いだ俺は、奈良橋に向けてそれを差し出していた。
「なんか…夢みたい。翔太くんと…こうして二人っきりで過ごせるなんて…」
コートを脱いで薄着になった奈良橋は、嬉しそうに俺の顔を見つめている。
「…俺の、どこがそんなにいいんだ?」
「え、えっと!まず顔も好みだし…身長も高くて、足長いし…。とにかく私にとって翔太くんは、大学の頃から王子様みたいな人なんだよ?」
「へぇ」
ふふっと笑い声を漏らした奈良橋が、ワイングラスに口をつける。
グラスの中身が減る度に、俺はボトルを傾けてワインを注いでいく。
ボルドーのような唇の端を、奈良橋は上に向かって釣り上げていた。
「そんなに急いで酔わせようとしないで?夜は長いんだから、ゆっくり楽しみたいの」
身体が熱くなってきたのか、奈良橋は上に羽織っていたボレロを、急に脱ぎ始める。
そしてむき出しになった肩と胸元を、惜しげもなく俺の前に晒していた。