幸か不幸か、俺とエリカのこれからの稼動は、見事にすれ違っている。
こうなることを見越してあいつはシフトを作ったのかと、疑いたくなる程偶然が重なっていた。
元気のない俺の様子に、店のスタッフも、相沢も気づいていたに違いない。
ここに来た目的を失った俺は、周りの視線を振り払いながら、最終出勤日まで泥のように働いた。
エリカが使っている事務所から、ほんの少しずつ自分の私物を撤去していく。
ヘルプが終わったら、俺はそのまま自動的に年末年始の休暇に入る。
(本当に…仕事以外では、滅多に会えなくなるんだな)
空になった自分のロッカーを見つめながら、俺はゆっくりと瞳を閉じていた。
ヘルプが終われば、俺が住んでいたマンションの部屋も会社に引き払われる事になる。
三日ぶりにそこを訪れた俺は、引越しの準備を進めるため、自分の荷物を無心でダンボールに梱包していった。
エリカは今日遅番で出勤の日だから、もちろん隣にはいない。
会おうと思えば会えたのに、俺は敢えてこの時間を選び、ここにやってきた。
大方片付いた部屋を見回しながらため息をつき、ベランダの方へと足を運ぶ。
(もう、禁煙する必要もないんだな)
荷物の中から見つけたせいで、また吸いたくなってしまった。
タバコを口にくわえながら、ジッポーで火をつける。
青空に向かって立ち上る白い煙を何気なく見つめていると、玄関からインターフォンの音が聞こえてきた。