「…へぇ…。もう止めるか?」

いっそのこと、このまま雰囲気に飲まれてくれ。

9年も結城をほっといた奴のことなんか、すぐにでも忘れさせてやるから。

思考がうまく働かないのか、結城は俺の顔を見上げたまま固まっていた。

情欲に濡れた目の前の瞳は、俺のことを拒否してなんかいない。

「もっと…」

水なのかキスのことなのか考える前に、結城の唇を荒々しく塞いだ。

俺のことを忘れられないくらい、深く刻みつけてやる。

結城が今夜のことを、後悔する日がいつかやって来てもいいように。

「責任とってやってもいいけど」

「…へ…?」

「…俺と付き合ってみるか?」

結城の反応を伺いながら、舌で指の付け根から先をなぞっていく。

目を丸くした結城の頬に手を伸ばして触れたら、たまらなく愛しさが溢れて破顔してしまった。

その男の代わりでもいいなんて、馬鹿らしいことを本気で考えていた。

俺は、それくらい必死で。

望みなんてなくてもいいから、ただこいつを自分のそばに置いておきたかった。

無言で頷いた結城の身体に覆いかぶさって、首の後ろに回した手に力を込めて抱きしめる。

明日の朝に覚えてないって嫌がっても、絶対に離さない。

恋人同士のキスと呼ぶにはあまりにも一方的過ぎるキスを、俺は飽きることなく結城に浴びせ続けていた。