「そんなもん嵌めてるくせに、…よく平気で“責任”なんて言葉使えるな」

「…それを、君にわかってもらうつもりはないよ」

…ああ。そんなのわかりたくもない。

「俺はお前を…一発殴らないと気が済まない」

「好きにすればいい」

天草紘人はやけに落ち着いていて、それが俺の神経をますます逆なでする。

こっちは本気なのに、どうせ殴る気なんてないんだろと、まるで俺を挑発するような態度だった。

言われた通り好きにさせてもらおうと思った俺は、勢いよく天草紘人の胸元に掴みかかる。

「…ま、待って!」

その瞬間、エリカが俺たちめがけて飛びかかってきていた。

「やめて、お願い!」

天草紘人をかばうように手を伸ばすエリカにを見ていると、胸の辺りに鋭い痛みが何度も走る。

そうやって庇うほど、こんな奴を想ってるのか…?

何も知らずに浮かれていた昨日の自分に、ひどく吐き気を感じる。

嫉妬と怒りで、頭の中はぐちゃぐちゃだった。

「…ふざけんなよ」

天草紘人めがけて、俺は拳を振り上げる。



「…パパ…?」

でも寝室のドアから聞こえてきた小さな声に、俺の動きは停止していた。