「ちょっと聞いてよー。昨日さぁ、ついに奴が夢に出てきたんだけど!」

「奴って?誰のこと?」

「…橘マネージャー」

休憩室のドアを開けようとした俺は、自分の名前が持ち出されたのを聞いてその場で固まった。

声の主は言わずもがな最近俺を悩ませてるあの女だ。

結城エリカ、20歳。

なんでも18歳の頃からショップのスタッフとしてバイトに入り、そのままノリで社員登用試験を受けたら合格してしまったらしい。

その時の面接を担当したのは、俺の上司でもある平泉さんだ。

あのオヤジ…絶対自分の好みで選んだに違いない。

そうじゃなかったら敬語もろくに使えないし、自分がミスをしても人のせいにして言い逃れようとするような奴を合格させるわけない。

接客に関しては自信があるみたいだが、経験がある分それは出来て当たり前のことだろう。

それよりも、悪いところばかりに目がいってしまってキリがない。

それでつい怒鳴ってしまう俺にも、絶対屈しようとしないで歯向かってくる。

今回マネージャーとしてOJTの店舗研修の責任者に任命されたものの、今まで周りにいなかったタイプだけに、俺も扱いに困っていた。

「えー。エリカだけ興味なさげだったのにー。いつの間に夢で見るほど想い焦がれちゃったわけ?」