「…いいか寧々。早く寝ないと、サンタさん来ないからな」
濡れた髪をドライヤーで乾かしてやりながら、俺は寧々を優しく嗜める。
寧々は大きな欠伸をしながら、俺の話にうんうんと頷いていた。
「おやすみ、しょうちゃん」
「おやすみ」
エリカと一緒に寝室に向かっていく寧々を笑顔で見送って、リビングのソファーに腰を落ち着ける。
いつもなら、ここでお別れ。
…でも今日は違う。
寧々が寝静まった後、枕元にプレゼントを置き、それからエリカと話をする。
(大丈夫。…きっとうまくいく)
二年目渡すはずだった指輪をそっと取り出して、自分に何度となく言い聞かせる。
頼んでおいたマリッジリングは年明けの納期だから、俺の手元にはこの指輪しかない。
…それでも十分だ。
プロポーズしたあと、ちゃんとしたものも用意してることを伝えよう。
きっとエリカは、俺のことを受け入れてくれる。
静寂に包まれた部屋の中で、指輪をじっと眺めながらその時を待つ。
さっきから、手の震えが止まらない。
手のひらがうっすら汗ばんでいて、自分が柄にもなく緊張してることを悟る。
時計の針が十二時を回った瞬間、俺は大きく息を吐き出していた。
(まずは寧々だな)
今夜は大仕事が二つもある。
夢見た未来を現実にするための、大事な仕事だ。
気を引き締めた俺が、向かう場所は一つだけ。
寧々へのプレゼントを手に取りながら、俺は寝室の方にそっと足を向けていた。