「ママおかえりー、見てぇ!じゃーん」
パタパタと走ってきた寧々が、嬉しそうにエリカの足に抱きついている。
「…これ…」
ダイニングテーブルに並べられたケーキやご馳走を見たエリカは、なんだか戸惑ったような表情を浮かべていた。
「全部テイクアウトで悪いけど。お前ずっと頑張ってたし、俺からのおごりな」
「……」
黙り込んでしまったエリカが、唇を噛み締めながら下を向く。
「何つっ立てんだ。早く座れ。寧々も食べないで、ずっとお前のこと待ってたんだぞ」
「ママっ、はやくっ!」
俺と寧々に急かされるようにして席に着いたエリカは、複雑そうな顔で俺と寧々のことを見つめていた。
「寧々も食べないで待ってたんだもんな」
「うん!おいしー」
すごい勢いでチキンを頬張る寧々を見て、エリカがようやく笑顔をみせる。
だけどその顔には、やっぱりいつもの元気が感じられない。
ケーキを食べたあと、エリカはいつものように寧々とお風呂に向かっていった。
時折浴室から聞こえてくる賑やかな声に、俺はなんとなく胸を撫でおろす。
やっぱり疲れが溜まっていただけだったんだろう。
さっき感じた不安も杞憂だったんだ。
…俺の勘違いならそれでいい。