「あれ…」

おかしいと思った俺は、すぐに玄関の方に向かった。

そこには案の定、エリカの姿があって。

こちらに背を向けながらブーツを脱いでいる姿に、俺は思わず眉を寄せてしまった。

「お前なんで歩いて帰って来るんだよ。電話すれば迎えに行くって言ったろ」
 
「……」

余程疲れているのか、エリカからは何も反応が返って来ない。

心配になって肩を掴みこちらを向かせると、エリカの顔色はとても悪くなんだか憔悴しきっているように思えた。

「顔真っ白だぞ。ほら、こんなに冷たくなって…」

両手でエリカの頬を包み込めば、氷のようにひんやりとした感触が指先を伝わってくる。

何やってんだと声を掛けようとすると、エリカは俺を拒絶するようにその手を払っていた。

「触らないで」

「エリカ…?」

向けられたのは、一切感情のこもらないような冷たい瞳で。

狼狽えてしまった俺は、一瞬だけ言葉に詰まってしまった。

「…なんだよ。一日中サンタの格好させられたせいで機嫌悪くなったのか?」

声を掛けてもエリカの反応は薄く、まるで俺を避けるようにさっさとリビングの方に向かってしまう。

数時間前店で別れた時とはあまりに違いすぎる態度に、俺はどうしようもないほどの不安を覚えていた。