「しょうちゃん、おなかへった~!」

「寧々だけ先に食べてるか?」

「…ママまってる」

いつもより豪勢な夕食が並び始めたテーブルを見て、寧々は帰ってきてからずっと目を輝かせている。

お腹が減っているだろうに、いくら勧めても頑なに食べようとしない。

今日が特別な日だって、子供なりに分かっているのだろう。

必死に空腹と戦っている寧々が可愛くて、俺はずっとその様子を眺めていた。

(店が終わるまで、あと三十分くらいか…)

時計を眺めながら、次第に落ち着かなくなってくる。

ポケットに忍ばせた指輪のケースに触れながら、もう何度ため息をついたのかわからない。

「ジュースは?本当にいらない?」

「……」

度重なる俺の誘惑に、寧々は頬を膨らませながらこちらをじとりと睨んでくる。

「その顔、あいつそっくり」

「…ねね、まってるもん…」

頑固なところも母譲りで、俺はそんな寧々の反応に頬を緩ませまくっていた。

「もうすぐだから。今日はママのこと、早めに車で迎えに行ってやろうな」

拗ねてしまった寧々の頭を撫でながら、優しく笑いかける。

女の子は父親に似るというけれど、寧々は本当にエリカに瓜二つだ。

俺の遺伝子なんて、一体どこに反映されているのだろう。

頬杖をつきながら、寧々の顔に俺の面影を探す。

「…しょうちゃんなあに?」

「…いや…」

なんとなく角度によっては…なんて考えていると、玄関の方から施錠の外れる音が聞こえていた。