「来年からは、…俺の前だけにしろよ」
「……!」
潤んだエリカの双眸が大きく見開かれ、まるで愛おしいものでも見るような優しい表情に変わっていく。
家まで待ちきれない。
俺の言葉は、完全なフライングだ。
それでもキスを拒もうとしなかった時点で、期待はさらに大きく膨らんだ。
…早く、エリカの口から話を聞きたい。
もう一度近づけた唇を、エリカが拒むことはなかった。
「じゃあ、…寧々と家で待ってるから」
黙々と商品整理しているエリカの背中に、そっとそう告げる。
いつもより一時間残業したけど、俺が上がる頃には客足もようやく落ち着いていた。
「…うん」
さっき休憩室での出来事を、エリカはどう思っているのだろう。
すぐにでも聞きたいくらいだけど、今はまだ我慢だ。
「無理するなよ」
「わ、わかったから。早く帰って」
さっきからチラチラこっちを見ている相沢たちが気になるのか、エリカは恥ずかしそうに俺の胸を押し返してくる。
「…じゃあ後でな」
今日はもしかしたら、俺にとって最高の一日になるかもしれない。
耳まで赤くなったその姿に目を細めながら、俺は寧々の待つ保育所へと向かっていた。