「お前さ、今普通にスカートの中見えたんだけど」
「え?ああこれね、見えても大丈夫なやつだから」
偶然休憩が被ったエリカに、俺はひたすら抗議の目を向ける。
エリカに見蕩れてだらしなく鼻を伸ばしていた男性客を、午後に入ってからどれだけ牽制したと思ってるんだ。
「あのなぁ…そういう問題じゃなくて…」
どう考えても危機管理の甘いエリカには、俺も頭を抱えたくなる。
「絶対私似合わないよねー。…みんな自分がやりたくないからってお世辞言い過ぎだし…」
全く見当違いのことを言っているエリカに、俺は心の底から大きなため息をついていた。
「…誰も似合わないとは言ってないだろ」
もっと自分のことを自覚して欲しい。
男を惹き付けるには十分な魅力を持っていることを、どうか忘れないでほしい。
「やめてよ、橘マネージャーまで…」
「…だからあんまり見せびらかすな」
「な、なにを言って…からかわないで」
顔を真っ赤に染めたエリカは、ミネラルウォーターが入った紙コップを持ちながら、ふるふると震えている。
ああ…俺まで毒されてしまった。
「たち…」
そのまま顎を持ち上げて、言葉を紡ごうとしたエリカの唇を優しく塞ぐ。
(業務中に、…なにやってんだ俺)
頭ではそう思うのに、身体が言うことを聞かなかった。