急に立ち止まったエリカが、ゆっくりと俺の方を振り返ってくる。
あまりにも真剣な目をしているから、思わず見とれてしまった。
「明日…橘マネージャーに、大事な話があるの」
言いよどむことなくそう言ったエリカは、なにか決心したように俺のことを見据えている。
…直感的に寧々のことだと思った。
ようやく父親だと認めてくれるのかと、淡い期待が胸を走る。
「奇遇だな。俺も大事な話がある」
俺も真面目な顔でそう答えると、エリカの表情が一気に和らいでいた。
「どうせ、いつものあれでしょ」
「…どうかな。いつも以上に期待して待ってろよ」
「私のは、…あんまり期待しなくていいから」
「なんだよそれ。お前は本当に…俺を振り回してばっかりだな」
持ち上げて落として、相変わらず俺のことを振り回す女。
でもエリカだから。
お前にだったら、いくら振り回されても構わない。
「じゃあね。また明日」
「しょうちゃん、ばいばい」
「おー気をつけてなー」
もし、明日二年前のクリスマスをやり直すことが出来たのなら。
俺はもう二度と、エリカのことを手放したりしない。