「…眠ーい…」
「もうちょっとだから。寝るなよ」
足元の覚束無い結城の身体を支えながら、俺はもどかしい気持ちでエレベーターを待つ。
自分のマンションに連れて帰ろうかという考えは、あっさり切り捨てた。
バーのすぐ近くのシティホテルになだれ込んだのは、こいつと過ごす時間を一秒だって無駄にしたくなかったからだ。
カードキーで部屋の鍵を開け、酩酊状態の結城を横抱きに抱え直し、ベッドの上へと運ぶ。
「ん~…」
そこへゆっくりと降ろせば、シーツの柔らかい肌触りが気持ちいいのか、結城は身体を横に向けまるで猫のように丸くなってしまった。
「……隙だらけだな」
かなり際どいところまで捲れ上がった紺色のティアードスカートから、艶かしい太腿が露出している。
六歳も下の相手なんてありえないって思ってたくせに、今俺の前にいるこいつは、どこからどう見ても立派な“女”で。
呆れるくらい欲情している自分に、俺は嘲笑を漏らしていた。
今ここにいるのが、別の男じゃなくて良かった。
失恋したばかりの結城の警戒心なんて、ないに等しい。
…別に相手が俺じゃなくても、こうして弱みにつけこむことが出来ただろうから。