勢いよく立ち上がった寧々が、入口のところにいるエリカに向かって突進していく。

「しょうちゃんとね、ちゅみきしてた!」

そう言いながら、ぴょんぴょん跳ねながらエリカの足に抱きつく寧々。

ふと顔を上げて俺の姿を確認したエリカは、表情に驚きを滲ませていた。

「…自分の娘放っておいて、どこに行ってんだよ。この不良ママ」

「橘マネージャーこそ、今業務中のはずでは」

「俺は…短い休憩時間を割いてでも寧々と遊びたかっただけだ」

エリカが心配で追いかけてきたことなんて、照れくさくて言えそうもない。

とりあえず、寧々をすぐ迎えに来てくれたことに、俺は安堵していた。

「寧々、また明日も積み木やろうな」

「ん!しょうちゃん、だいすきっ」

「えーっ!!」

寧々にまっすぐな好意を向けられて喜ぶ俺を、エリカはどこか不服そうな顔で見上げてくる。

「なんだ、悔しいのか?」

「…別にっ」

膨れたエリカが可愛くてもっと見たくて、どうにかこちらを向かせようと肩に触れる。

「やめて」

キスマークのことを相当根に持っているのか、触ろうとしただけでものすごく冷たい視線を向けられてしまった。



「昨日は…悪かった」