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翌日。当然のことながら、エリカは一日中不機嫌だった。
仕事のこと以外でエリカと会話を交わせていない俺に、相沢たちが遠巻きに同情の視線を向けてくる。
…謝ればいいってことくらい、俺が一番わかってる。
エリカの着ているタートルネックの服の下には、つけた本人でも引いてしまうくらい濃いキスマークが何個もあるのだから。
「あれ、今日は残業しないですぐ上がるんだ」
「人と会う約束があるから」
「珍しー、デート…ってなわけないか」
エリカとそんな会話を交わしている相沢が、意味ありげに俺の方をちらっと見てくる。
「…デートだよ。それも、ものすごいイケメンと」
聞き捨てならないそのセリフに、商品整理をしていた俺の体が、びくっと反応する。
…まさか、あいつと?
「じゃあお疲れ様でした!」
同じく驚いている相沢を尻目に、エリカはスタスタと俺の前を通り過ぎていく。
「橘マネージャー?あれ、…いいんですか」
「……」
いいわけがない。
ここまで頑張ってきたというのに、くだらない嫉妬と、ぱっと出てきたわけのわからない初恋の相手に、エリカを持っていかれるわけにはいかない。
「先に、五番入ってもらっても構わないですよ?」
「…悪い」
相沢に礼を言って、休憩室のロッカーに自分のコートを取りに行く。
スマホを忘れていることにも気づかずに、俺はエリカの後を追ってエレベーターに乗り込んでいた。