一度信用をなくした人間のことを、俺は簡単に信じたりしない。
だけど結城がせっかく築き上げてきたものを、壊すような真似は出来なかった。
「…判断は俺ではなく結城に任せる。呼び出したらいつでも店に来れるつもりでいろ」
「ありがとうございます…!」
白鷺との電話を終えた俺は、店の方にそのまま直接電話を掛けていた。
『勝手な判断で、橘マネージャーの番号教えて申し訳ありませんでした。私はっきり言ってあの女大嫌いでしたけど、電話口で話してみたら、…まあまあ心入れ替えてたみたいなので…』
「別にいいよ。俺も今の人員じゃクリスマスも年末年始も乗り越えるのは厳しいと思ってたし…」
『あの…橘マネージャー。実は今日、エリカ休日出勤してバックヤードで作業してるんです』
「…へぇ」
『驚かないんですね』
「エリカの性格を考えれば、やることなんて大体分かる」
『じゃあ早く仲直りして、エリカの無茶を止めさせてください。あの子、クリスマスまで十四連勤するとか、本気で言ってますから』
それは…確かに馬鹿だと思った。
エリカは相変わらず、俺の心配をよそに勝手なことばかりしてくれる。
「俺とエリカの“仲”なんて、始めから壊れたままだけどな」
意地っ張りなエリカに正攻法は効かない。
それなら気持ちが俺の方を向くように、仕向けるしかないようだ。