突然辞めてしまった白鷺ゆりのおかげで、一日中忙しなく動き回るエリカの姿を、俺はついつい目で追ってしまう。

「なぁ結城…」

「忙しいので後にしてください」

タイミングを見計らって声をかけても、今のところ完全に拒否されてしまっている。

帰り際に車で送ろうとすると、必ずと言っていい程相沢も同席させるぐらいだ。

徹底的に俺と二人きりになる事を避けられ続け、あの夜のことを弁解したくても俺は中々話を切り出せずにいた。

…どうやらエリカは、何もなかったことにしたいらしい。

名前で呼ばれ、大した抵抗も受けず、エリカの方から俺の口づけに応じた。

もしかしたらと期待して調子に乗ってしまった罰だと思えば、俺にはもう、どうすることも出来ない。

公休日に連絡しても、忙しいからと突っぱねられ、会ってすらもらえなかった。

一人で過ごす時間が、こんなにも退屈なものだとは思いもしなかった。

エリカや寧々と過ごせたのは、当たり前じゃなく、奇跡のような時間だったんだ。

もう、年末までそんなに時間もない。

鳴らないスマホを握り締めながらベッドに寝転んでいた俺は、それが掌の中で急な振動を始めた瞬間飛び起きて、息を飲みながら画面を覗き込んでいた。