エリカとよく話さなかったことを、俺はすぐに後悔することとなる。
あれから1日休みを挟んだ、次の出勤日。
いつも通り車で送ろうとエリカの家のインターホンを押したが、出てくる気配は全くない。
ここに来てから連絡がつかないことはさすがに初めてで、この間のことをそんなに気にしていなかった俺は、ようやく焦りを感じていた。
(まさか、家に帰ってないのか…?)
エリカに関しての心当たりなんて、俺にはひとつしかない。
『…朝から何ですか…』
遅番にも関わらず電話で起こされた相沢の声は、非常に不機嫌だった。
「結城の件で聞きたいことが…」
『ああ、はい。昨日からウチにいます』
「…!」
さも面倒くさそうに、はじめから俺が聞いてくるのを予見していたように、相沢は淡々とその話を語る。
『しばらく泊めてくれと、私も突然言われまして。今朝はもう、三十分も前に出勤していきましたよ。何があったんだか知りませんけど、いい迷惑です。ほんと』
「…すまない」
つい謝ってしまった俺の耳に、相沢の盛大なため息の音が聞こえてくる。
その日から、俺はあからさまにエリカから避けられるようになってしまった。