夢にしてはリアルすぎるその感触に、頭のどこかでは気づいていた。
だけどもう、止める事が出来ない。
エリカの身体を引き寄せて、もっと深く唇に食らいつく。
久しぶりに味わったその感触に、思考が麻痺してしまうくらい俺の身体は熱くなっていた。
「…エリカ…」
躊躇いがちに胸の辺りを押し返してくるだけで、エリカは本気の抵抗をしてこない。
もしかしたら、俺を受け入れてくれるのかもしれない。
そんな浅はかな考えが、俺の行動を後押ししてしまった。
「ひ、ぁっ…」
柔らかな髪から香るエリカの匂いが、俺の鼻腔を擽り、理性を奪い去って行く。
耳殻を舌先でなぞり、耳たぶを甘噛みせる。
エリカの肩口がびくっと反応するたび、自分の所有欲が少しずつ満たされていくのがわかった。
(俺の…こいつは俺のなんだ)
無我夢中のまま、後ろにあったソファーの上に、エリカの身体を押し倒す。
「だ…だ、め…っ」
もう、何度キスしても足りない。
エリカには、すぐにどこかへ消えてしまいそうな、漠然とした危うさがある。
急にせり上がってきた不安に、俺は胸が押しつぶされそうになっていた。
エリカがいなくなったあの日。
俺は冷たい雪の降りしきる中、どうすることも出来なくて、何時間もただ立ち尽くしていた。
「…い、くな…」
…二度と、あんな思いはしたくない。
「もう、どこにも行くな」