もったいなくて、誰にも見せたくない。

せっつくようにキスを繰り返していると、エリカは花が綻ぶような笑顔で俺の背中に手を伸ばしてきた。

…なんて、都合が良い夢なんだ。

そう思いつついいようにしてしまうのは、精神的にももう限界だったからかもしれない。

当たり前のように触れていたものが目の前にあるのに、何も出来ないもどかしさ。

今さら紳士ぶる必要はない。

俺は、こういう男なのだから。

「…エリ…」

愛しいものを篭絡したいと思うのは、男の性でしかない。

「…起きてください…」

軽く浮上した意識の中で、俺を心配そうにのぞき込むエリカの表情が浮かぶ。

「橘マネージャー…!」

そんな呼び方をされるのは、他人みたいでものすごく嫌だった。

必要以上に距離をとられるのも、ずっと苦しくて仕方が無かった。

「……やめろ…」

抑えてきた感情が、一気に溢れ出してくる。

「ちょっと、なんでこんなに酔っ払ってんの」

「…もうやめろよ…その呼び方」

「はぁ?…何言ってんの」

「……翔太だろ、…エリカ…」

「…んっ…」